OCPP 1.6 とは
こんにちは、バックエンドエンジニアの山浦です。
こちらの記事ではOCPPとは何かについて、ざっくりとご紹介できればと思います。
OCPPとは
OCPP(Open Charge Point Protocol)はEV充電器とその充電器が通信するサーバと送るメッセージについて定義しているプロトコルで、世界的にEV充電器で採用されておりグローバルスタンダードになっています。
OCPPには充電の開始、終了やEV充電器のソフトウェアアップデート、さらには予約などの通信メッセージが仕様として定義されており、これに準拠したEV充電器、サーバを用意することで自社のサービスはもちろん、他社のOCPP準拠のEV充電器やサーバとやりとりすることができるようになります。
用語
OCPP上だとEV充電器、EV充電器用のサーバはそれぞれ呼び方が決まっています。また、他の頻出するワードも併せてご紹介します。
パラメータ名 | 説明 |
---|---|
Charge Point | EV充電器 |
Connector | EV充電器についている充電ケーブルの挿し口。OCPPではCharge Pointに1つ以上のコネクタがついている想定で仕様が作られている |
Central System | EV充電器用のサーバ |
Transaction | 充電のこと、例えばStartTransactionは充電開始を示す |
reservationId | コネクタを予約していた場合、充電開始によってキャンセルされた予約のID |
これらを先ほどの図に当てはめますと
となります。
では、実際にCharge PointとCentral Systemはどのようにして通信し、メッセージのやり取りを行うのか、通信方法からご紹介します。
通信方法
OCPPの場合、Charge Point(Client)からCentral Systemにメッセージを送るだけでなく、Central SystemからCharge Pointへもメッセージを送ることができます。その双方向通信にはWebSocketが使われます。
WebSocketとは
単一のTCP通信のコネクションに双方向通信を確立するプロトコルです。
HTTPプロトコル(443,80番ポート)と互換性があり、実際WebSocket通信を開始する際にはクライアントからサーバにHTTPリクエストで問い合わせ、Upgradeヘッダーを利用してwebsocketプロトコルにスイッチすることで接続を確立します。今回の場合、クライアントはCharge Point, サーバはCentral Systemです。
WebSocketを用いて通信を確立後、具体的に送信するメッセージをいくつかご紹介します。
Messageの例
Authorize
充電を開始、終了する前に実行する認証のメッセージです。認証はCharge PointからCentral Systemにメッセージを送ることから開始します。
Central Systemに送られるデータにはidTagと呼ばれるパラメータが含まれていて、このidTagに含まれるトークンを使ってサーバ側で認証を行い、問題なければidTagの期限やステータス情報をidTagInfoという形式にしてレスポンスを返します。
idTagの中身はサービスによって異なり、例えばEV充電器を使うためにIDカードが必要あればそのIDカードの番号やそのハッシュ値が含まれていると考えていいでしょう。
Start Transaction
Transactionとは充電のことで、StartTransactionは充電開始のメッセージになります。正確にはEV充電器で充電を開始した後にサーバに充電開始した旨を送るメッセージです。
充電開始のリクエストには以下の様なパラメータが含まれています。
パラメータ名 | 説明 |
---|---|
connectorId | コネクタのID |
idTag | 認証されたトークン |
meterStart | 充電開始時のメータの値 |
timestamp | 充電開始時のタイムスタンプ |
reservationId | コネクタを予約していた場合、充電開始によってキャンセルされた予約のID |
補足:OCPPの場合、Charge Pointにはconnector(充電ケーブルの挿し口のことだと思ってください)が一つ以上の充電器を想定されています。
レスポンスには次の様なパラメータが含まれます。
パラメータ名 | 説明 |
---|---|
idTagInfo | Authのレスポンスと同じ内容 |
transactionId | 開始された充電のID |
レスポンスに含まれるtransactionIdとidTagは充電を終了した時に必要になるのでEV充電器側で保持することになります。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回の記事でOCPPの全体的な雰囲気を掴んでもらうことができたら何よりです。次回以降の記事ではOCPPの設計思想や実際のシーケンスなど、OCPPの資料に載っていない部分についても書いていこうと思います。
日本のEV充電器の普及率は他の国と比べてまだまだ低く、これから伸ばしていく必要があります。OCPPを採用することで日本、ひいては世界のEV充電器業界全体で技術的に連携できることは非常に大きなメリットがあると思います。
これからEV充電器を作る方はぜひOCPPをご検討ください。